電子棚札の導入を検討する際、クラウド型とオンプレミス型のどちらを選ぶかは重要な判断です。本記事では両者の違いと選び方、メーカー選定のポイントまで解説します。
電子棚札(Electronic Shelf Label:ESL)とは、これまでの紙の値札から、商品名や価格などの情報をデジタル表示する電子表示器のことです。
多くの機種は電子ペーパーを採用し、消費電力を抑えつつ高い視認性を確保しています。POSや在庫管理システムと連携し、中央サーバーからネットワークを介して各棚札に情報を配信するのが基本構造です。
この「中央サーバー」を自社内に持つか、クラウド上に置くかによって、運用形態が「オンプレミス型」と「クラウド型」に分かれます。人件費削減やダイナミックプライシング、店舗DXなど導入目的の多様化により、自社に適した運用形態の見極めが導入成功の鍵となっています。
クラウド型電子棚札は、管理サーバーをクラウド上に置き、インターネット経由で棚札を制御する形態です。製品によっては、初期投資を抑えた早期立ち上げや、複数店舗の一元管理・多店舗展開へのスムーズな対応、24時間365日のシステム運用保守サポートなどを提供しているものもあります。
自社でサーバーを保有しないため、設備投資やインフラ運用の負担を大幅に軽減できるのが最大の利点です。
参照元:BIPROGY株式会社(https://www.biprogy.com/solution/service/shelf-tag.html)
オンプレミス型は、企業がサーバーやネットワーク機器を自社の施設内やデータセンターに設置し、自社主導で構築・管理・運用する形態です。
オンプレミスの大きなメリットとして、要件や業務内容に合わせてシステムを自由に構築できるカスタマイズ性、そしてシステムやデータを自社の管理下に置けるセキュリティ・統制性が挙げられます。基幹システムや独自の業務プロセスと密に連携させたい場合、機密性の高いデータを扱う場合に強みを発揮する運用形態です。
両者の違いを判断軸ごとに整理すると、以下のように整理できます。導入形態選定の際は、コスト構造だけでなく、拡張性や災害対策まで含めて総合的に判断することが重要です。
| 比較項目 | オンプレミス | クラウド |
|---|---|---|
| コスト | 初期費用が高額 | 初期費用が安い |
| 導入スピード | 導入に時間がかかる | 導入が早い |
| カスタマイズ | 自由度が高い | 制約はあるが自由度あり |
| セキュリティ | 対策次第で高い | 事業者依存 |
| 保守・管理 | 管理の手間が比較的かかる | 管理の手間が比較的少ない |
| 拡張性 | 柔軟なリソース追加が難しい | 必要に応じてリソースを調整可能 |
| 災害対策 | 復旧に時間とコストがかかる | 複数拠点で管理され迅速に復旧可能 |
電子棚札のコストは、導入時だけでなくサーバー管理・保守などの運用費が発生します。クラウド上のサーバーの場合、月額2〜3万円ほどで、自社サーバーの場合は規模などによって大きく変わります。
導入時にかかる電子棚札の機器コストはメーカーやサイズ、表示色、機能によって変わり、1枚当たり1,000円〜3万円など幅があります。初期投資を抑えたい場合はクラウド型、クラウドシステムで掛かるサーバーやシステム保守費用などの運用費が高額である場合はオンプレミス型が候補になります。
参照元:リコー(https://www.ricoh.co.jp/products/line-up/digital-signage/column/electric-shelf-label)
クラウドはスケーラビリティ(拡張性)が高く、CPU・メモリ・ストレージなどのリソースを業務の状況に合わせて増減させることが可能です。店舗数の増減や商品SKUの拡大が見込まれる場合、クラウド型は柔軟に対応できるため、成長フェーズの企業や需要変動が大きいチェーンストアに適しています。
オンプレミス型は、システム基盤からデータの取り扱いに至るまで、全てを自社の管理下に置くことができます。そのため強固なセキュリティと情報統制のもと運用することも可能です。アクセス権限やネットワーク構成、バックアップ方針を自社ルールで決められる点は、厳格なガバナンスやコンプライアンス対応が求められる企業にとって重要です。
一方、クラウドも事業者による高度なセキュリティ対策が施されており、専門知識がない企業でも一定の安全性を確保できます。
クラウド型は、インターネットを通じて必要なインフラや機能をすぐに利用できるため、導入作業を大幅に簡略化でき、短期間で手間なく導入できます。
また、保守・運用はサービス提供者が担当するため、利用者側の管理負担は最小限で済みます。IT人材の確保が難しい店舗や、迅速な立ち上げが求められる場合はクラウド型が有力な選択肢となります。
電子棚札は、基幹システムの価格の情報が、ESLへ自動で反映されるように、API連携やCSV取り込みなどのシステム構築が必要です。
既存基幹システムが独自仕様の場合や、緊密な連携が求められる場合は、カスタマイズの自由度が高いオンプレミス型が優位になるケースもあります。
クラウド型を選ぶ場合も、想定する連携方式(API・CSV等)に対応しているかを事前に確認しましょう。
複数店舗の一元管理や多店舗展開へのスムーズな対応も行えるクラウド型は、チェーンストアと親和性が高い選択肢です。
本部から全店舗の価格や販促情報を一括制御でき、新規出店時の立ち上げもスピーディに行えるため、スーパー・ドラッグストア・コンビニなどの多店舗チェーンで採用されるケースもあります。
クラウド型は、導入費用を抑えられ、短期間で手間なく導入できるという特性から、中小規模の小売店にも適した選択肢です。自社でサーバーやIT人材を抱える必要がなく、月額サーバー費用は2〜3万円程度で始められるため、費用対効果を検証しながら段階的にDXを進めたい店舗に向いています。
参照元:リコー(https://www.ricoh.co.jp/products/line-up/digital-signage/column/electric-shelf-label)
オンプレミスが適しているのは、機密情報を扱う金融機関や官公庁、研究開発部門などです。また、クラウドでは対応が難しい高度なカスタマイズが必要な企業や、専門人材で保守管理が可能な企業もオンプレミス型が向いているとされています。電子棚札を基幹の販売管理・在庫管理システムと密に連携させたい大手小売業や、社外にデータを出せない業態では、オンプレミス型が有力な選択肢になります。
ハイブリッドクラウドは、オンプレミスとクラウドを組み合わせて利用するシステム形態で、両者の長所を活かせるのが特長です。
機密性の高い基幹データはオンプレミスに残しつつ、電子棚札の管理基盤はクラウドで運用するなど、業務内容に応じて使い分けることで、セキュリティと柔軟性を両立できます。
ただし、管理工数が増加する恐れがあるため、運用体制を事前に整えることが重要です。
電子棚札を導入する際は、運用形態の選定と並行して、メーカー選びで押さえるべきポイントがあります。まず「目的の明確化と費用対効果(ROI)の試算」を行い、価格変更工数の削減だけでなく、ダイナミックプライシングや在庫管理精度向上といった副次効果まで含めて評価しましょう。
次に「ネットワーク環境の整備」として、店内全域をカバーできるアクセスポイントの設置状況を確認します。「ハードウェアの選定と検証(PoC)」では、全店に一斉導入する前に旗艦店で実証実験を行い、通信安定性や視認性について問題がないか検証するとよいでしょう。
さらに「既存システムとのデータ連携」の可否、そして「店内運用ルールの策定とスタッフ教育」まで含めてトータルで支援できるベンダーかを見極めることが、失敗しない導入の鍵となります。
電子棚札のクラウド型とオンプレミス型は、コスト・拡張性・セキュリティ・運用負荷・連携性という判断軸で最適解が変わります。多店舗展開やスピード重視ならクラウド型、独自要件と情報統制を重視するならオンプレミス型、段階的な移行を狙うならハイブリッド運用が有力候補です。自社の業務特性・経営課題・将来の店舗計画を踏まえ、PoCを含めたトータル支援ができるメーカー選定と併せて、適切な運用形態を選びましょう。



※階数の多い大手家電量販店ビックカメラで、全店約50店舗(※)の電子棚札を稼働させた実績あり。参照元:CREiST公式HP(https://www.creist.co.jp/casestudy/biccamera/)2024年11月15日調査時点