電子棚札は基幹・POSシステムとつながる設備です。無線通信や管理システムに潜むリスクと、暗号化など安全な製品を選ぶための判断軸を解説します。
電子棚札は単体で動く値札ではなく、ネットワークを介して基幹システムやPOSシステムとつながった設備です。
一般的な構成では、天井などの高所に専用のアンテナを設置し、基幹システム・POSシステムからアンテナまでを有線ネットワーク、アンテナから各棚札までを無線ネットワークで結びます。表示も基幹・POSシステムから遠隔で変更します。
つまり、棚札へ指示が届く「通信経路」と売価を指示する「管理システム」の両方が、攻撃や情報漏洩の入り口になり得ます。
参照元:NTT東日本(https://business.ntt-east.co.jp/column/bizdrive/electronic-shelf-labels-digital.html)
電子棚札の無線通信は、認証や暗号化がなければ盗聴やなりすましの標的になるリスクもあります。
IoT機器は10年以上にわたって使われることがあり、管理者が常駐せず、人手による監視が行き届きにくい性質を持ちます。電子棚札も売場に大量に設置され、日々の通信を人が見張ることはほとんどありません。そのため、通信の盗聴や、正規の送信元になりすました不正な指示で価格表示が書き換えられる危険があるのです。
表示が不正に変更されると、棚札とレジの売価が食い違うトラブルが起き、顧客からの信用低下にもつながります。
本部の電子棚札管理システムには、売価や在庫、販促計画といった経営に関わるデータが集まります。
漏洩につながる代表的な原因には、サイバー攻撃やアカウント情報の管理不足による「外部からの不正アクセス」、従業員のミスによる「設定誤り」、退職者アカウントの放置などによる「内部関係者の持ち出し」があります。
流出すれば管理体制を問われて社会的信用を失い、個人情報を扱うシステムと連携している場合は損害賠償に発展するおそれもあります。
堅牢な電子棚札の第一条件は、棚札との無線通信が「暗号化」と「認証」の両方で守られていることです。暗号化は通信の中身を第三者が読めない状態にする仕組み、認証は指示が正規の送信元から届いたものかを確かめる仕組みです。両方がそろって初めてなりすましにも備えられます。
電子棚札向けのBluetooth ESLプロファイルでは、アクセスポイントと棚札の間でやり取りするコマンドと応答を、AES-CCMで暗号化・認証します。
一方、電子棚札の無線通信には従来、各社独自の方式が多く使われてきました。「どの通信方式で、どう保護しているか」をメーカーに確認しましょう。
参照元:Bluetooth SIG(https://www.bluetooth.com/ja-jp/blog/bluetooth-esl-the-global-standard-for-the-electronic-shelf-label-market/)
暗号化に対応していても、方式が古ければ安全とはいえません。目安となるのがAESです。
AESは旧標準DESの後継として生まれた米国政府標準の暗号方式で、鍵長を128・192・256ビットから選べ、暗号化強度が高いことが特長です。
一方、DESは鍵長が56ビットと短く、現在は安全な方式とは考えられていません。RC4も脆弱性があり推奨されていません。
製品資料に「暗号化対応」とだけ書かれている場合は、採用している暗号方式まで確認してください。
参照元:iTSCOM for Business(https://www.itscom.co.jp/forbiz/column/office-environment/10404/)
管理システム側では、データの暗号化とアカウント管理の機能が欠かせません。具体的には、通信と保存データの暗号化、担当者ごとのアクセス権限設定、二段階認証、パスワードを複数回誤った際のアカウントロック機能がそろっているかを確認します。
売価の変更は本部の担当者のみ、店舗は閲覧のみといった権限の切り分けができれば、内部不正や操作ミスを抑えられます。あわせて、退職者のアカウントを放置しない運用ルールも整えておきましょう。
IoT機器は、製品の出荷後に脆弱性が見つかることがあります。そのため、脆弱性を修正したファームウェアやソフトウェアを配布・更新する手段が備わっているかが重要です。
電子棚札は一度導入すると長期間使い続ける設備です。更新の提供方法と、脆弱性情報を利用者へ知らせる体制の有無を導入前に確認しましょう。
IoT製品のセキュリティ対策は、調達側から適切かどうかを判断しにくい課題があります。その判断を助ける公的な目安の一つが、2025年3月に運用が始まったJC-STARです。
IoT製品のセキュリティ機能を共通基準で評価し、★1〜★4で可視化する制度で、★1・★2はベンダーの自己宣言、★3・★4は第三者評価で適合を確認します。なお、★2以上は製品類型ごとに順次整備が進められている段階のため、対象製品が取得できるレベルはIPAの公式サイトで確認しましょう。
電子棚札専用の制度ではないため、棚札本体やゲートウェイに公的・第三者の指標があるかをメーカーに尋ねましょう。
参照元:IPA(https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2024/press20250325.html)
クラウド型の電子棚札を選ぶ場合は、製品の機能に加えてサービス事業者の管理体制も確認します。判断材料になるのが、ISMS(ISO/IEC 27001)と、クラウド固有の管理策を加えたISMSクラウドセキュリティ認証(ISO/IEC 27017)の取得状況です。
参照元:JIPDEC(https://www.jipdec.or.jp/library/report/u71kba0000005ey0-att/20160628_01.pdf)
国のIoTセキュリティガイドラインでも、問い合わせ窓口やサポートがない機器・サービスの購入や利用は控えるよう示されています。。電子棚札でも、導入前にメーカーの問い合わせ窓口を確認し、インシデント発生時の連絡先と対応フロー、対応時間を把握しておきましょう。
参照元:総務省|IoT セキュリティガイドライン ver 1.0(https://www.soumu.go.jp/main_content/000428393.pdf)
電子棚札は基幹・POSシステムとつながるため、無線通信と管理システムの両面で対策が必要です。
選定時は、通信の暗号化と認証、AESなど信頼性の高い暗号方式、管理画面の権限設定、アップデート体制を確認しましょう。JC-STARやISMS、サポート体制も判断材料です。



※階数の多い大手家電量販店ビックカメラで、全店約50店舗(※)の電子棚札を稼働させた実績あり。参照元:CREiST公式HP(https://www.creist.co.jp/casestudy/biccamera/)2024年11月15日調査時点